2021年1月14日
カプセルを払い出すハンドル式自動販売機によって販売されるバンダイのカプセルトイ、ガシャポン®。本コラムのVol.6では、ガシャポンの商品であるカプセルレストイについて紹介したが、今回はその商品を売るための「ガシャポン自販機」の進化について、ベンダー事業部 事業開発チーム 五十嵐達志に聞いた。 >>後編はこちら
目次
海外でも人気を高めるハイクオリティなカプセルトイ
バンダイがカプセルトイ市場に初参入したのは1977年。当時は20円が主力だった市場に、100円という高額な価格でカプセルトイを投入したバンダイは、その商品の“質”で大きくアピールした。主な購買層は子どもであり、当時の子どもにとって100円はかなり重みのあるものだったが、その価格に見合った価値ある商品を提供することにより、シェアを拡大させてきた。
今ではバンダイのカプセルトイは市場で約60%のトップシェアを誇り、数々のヒット商品を生み出し続けている。また、商品の拡大と共にガシャポン自販機も進化を遂げてきた。
2020年6月からは最新モデルの自販機「ガシャポンステーション」の展開がはじまった。この「ガシャポンステーション」は専用ユニットを取り付けることで、従来の100円硬貨5枚に加えて、500円硬貨4枚の受け入れも可能となり、より幅広い値段設定ができるようになった。
しかし、比較的高価格な500円のカプセルトイがユーザーに受け入れられるようになったのも、まだここ4~5年くらいだ。「だんごむし」や「ザクヘッド」といったヒット商品。さらには外国人観光客からの人気、ハイターゲット向けの高額ホビー商品の登場などの要因が高価格帯のカプセルトイ人気を後押している。
これまで以上にクオリティの高い商品提供を可能とする
「プレミアムガシャポン」
新しく誕生した「ガシャポンステーション」。このマシンでは、今までより大きい80Φ(直径80mm)のサイズのカプセルを提供できるようになった。高価格帯は「プレミアムガシャポン」というブランドで展開する。
バンダイはSuicaなどの交通系電子マネーや二次元コード決済など、キャッシュレス決済に対応した「スマートガシャポン」という機器も展開している。しかし「プレミアムガシャポン」が、硬貨での支払いにこだわったのは、電子マネーを持っていない層にも高価格帯の商品を手軽に手にしてもらうためだ。
1月から800円で販売を開始する「鬼滅の刃 ちまっ!きゃら1」という商品はデフォルメされたキャラクターフィギュアだが、彩色や造形が細かく、原作の雰囲気を再現している。こういった凝った造形や電飾などのギミックを搭載した商品なども展開していく。
電飾ユニットを内蔵するフィギュア「アルティメットルミナス」シリーズは、従来500円というカプセル自販機の価格上限で対応するためにフィギュアとユニットを別々のカプセルに入れていたが、「プレミアムガシャポン」では1セットで販売することができるなど、より柔軟で多彩な商品展開が可能となる。これまで実現できなかった発光や可動などのギミックに凝った商品も期待できるという。
どこからでもガシャポンにアクセスできる
「ガシャポンオンライン」
さらに「ガシャポンオンライン」という、24時間いつでも、好きな時にPCやスマホを使ってガシャポンを購入できるオンラインショッピングサイトも2020年に立ち上がった新サービスだ。
従来のガシャポンは、全国津々浦々で幅広く販売している一方、欲しい商品がどこで売っているかわかりづらかったり、運よく見つけたとしても人気が高いとユーザーが殺到し売り切れてしまったりすることがある。ベンダー事業部ではオンラインで販売店舗情報を確認できる検索サービス「ガシャどこ?PLUS」なども提供しているが、それでもガシャポン自販機があるところに行って買う、ということが難しい場合がある。「ガシャポンオンライン」はこういった問題を解決できるサービスでもある。
面白いのはオンラインでカプセルトイを販売するのではなく、あくまで「ガシャポンを回す」というところ。数種類あるラインアップのうち、どれが手に入るかは実際に店頭で購入するのと同様にランダムになっている。オンライン上でも、ガシャポンならではの「何が出るかわからない、わくわく感」を楽しむことができる。商品によっては、「確実にレアな商品を手に入れたい」というユーザー向けに、10回連続でガシャポンを回すことでレアな商品が確実に1つ手に入るオンラインならではのサービスも行っている。出てきたカプセルを開封する演出もあり、「オンラインで楽しめるガシャポン」というスタイルにこだわったサービスなのだ。
新しい販路として重要度を増す「駅」、
ガシャポンマシンそのものを再現した商品も
前述したキャッシュレス決済対応の自販機「スマートガシャポン」は商品の販売以外にもユニークな使い方をしている。1つは「スタンプラリーのゴール」。JRの駅などでさまざまな駅を巡る「スタンプラリー」は人気だが、このスタンプラリーを完了させた時にもらえるQRコードをマシンに読み込ませることで賞品を入手できる。
昨今、Suicaなどの電子マネーとの相性の良い「駅」は、ガシャポン自販機、とりわけ「スマートガシャポン」の新しい設置場所として重要度を増しており、設置台数も拡大の一途を辿っている。
もう1つ、「ガシャポン自販機の風景」そのものが楽しめる商品というユニークな取り組みもベンダー事業部は行っている。「バンダイ公式ガシャポンマシン」という、本物の自販機を1/2サイズで再現した商品で、家の中でガシャポンを回す楽しさを体験できる。もともと別の部署でおもちゃの企画開発をしていた五十嵐がベンダー事業部に異動してすぐ担当を任され、思い入れのある仕事とのことだ。非常に好評で、2020年末にはクリスマスの目玉商品として最新バージョンが発売された。
最新の「ガシャポンマシン+(プラス)」はユーザーのニーズに応え、専用コインを追加し、付属のカプセルも増量。付属の専用コイン、または本物の硬貨をいれ、ハンドルを回すとカプセルが出てくるというガシャポンの楽しさを思う存分楽しめる商品だ。
軸足は「子どもたちの期待に応える」。
重視するのは「ガシャポンの基本」
五十嵐は、ビジネスの幅を拡大しながらも「低価格で気軽に買える」、「ガシャポン自販機が街のどこにでもある」というガシャポンの基本を大事にしていきたい、と語った。特に「ガシャポンのデパート」など、大きな売り場にガシャポン自販機がずらりと並び、それぞれのマシンにカプセルがギッシリと詰まった、ワクワクさせられる光景は五十嵐自身もお気に入りだという。
「色々な商品がずらりと並んでいて、手持ちの小銭で買える。何を回そうか、そのラインアップから何が出てくるのか、お客さまが色々なことを期待しながらハンドルを回す、“店頭での出会い買い”というのがこのガシャポンの基本だと思っています。大事にしていきたいポイントです」。
それとともに、SNSでの情報発信や「ガシャポンオンライン」など、サービスの幅を広げることで、商品購入へ熱心なユーザーの心も掴んでいきたい、というのがベンダー事業部の戦略である。
ユーザーへのメッセージとして五十嵐は、「今やガシャポンは世代や国も越えて幅広い方々が購入するものとなっており、色々な要望が出ていく中で、柔軟に、スピーディーに対応していきながら、お子さまがお小遣いでガシャポンを回す、という昔ながらの風景も大事にしたいと思います。変わらないものと、変えていかなくてはいけないものをしっかり見極めながら進化していきたいと思います」と語った。
©BANDAI
ガシャポン公式サイト「ガシャポンワールド」:
https://gashapon.jp/
プレミアムガシャポン公式サイト:
https://gashapon.jp/premiumgashapon/
ガシャどこ?PLUS:
https://gashapon.jp/shop/gplus.php
ガシャポンオンライン:
https://p-bandai.jp/gashapon-online/
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