2020年10月2日
前回は、東京駅一番街・東京キャラクターストリートにオープンした、世界初のオフィシャル仮面ライダーグッズショップ「仮面ライダーストア東京」について取り上げた。後編である今回は、店舗運営の中心人物であるアジアトイ戦略部 マーケティングチーム 鈴木健司の仕事への想いと経歴を尋ねた。 >>前編はこちら
アミューズメント施設から
お客さま相談センターへ、
「お客さま」と向き合い続けるキャリア
鈴木がエンターテインメントの世界に入った理由は学生時代の趣味にあった。大学生の時に車のドレスアップにハマり、外装にエアロパーツをつけてカスタマイズすることを趣味としていた。最初は自分1人で楽しんでいたが、車いじりを趣味とする人の同好会に参加するようになった。その同好会には、雑誌社などのメディアも集まっており、メディアを通して自分たちが楽しんでいることを全国の仲間と共有し合うことで、遊びの幅が大きく広がるのを実感した。この経験は鈴木が「エンターテインメント」の道を志す大きなきっかけとなった。
1999年、鈴木はナムコ (現バンダイナムコアミューズメント)に入社し、アミューズメント施設の店舗運営スタッフとして働くこととなる。
当時は格闘ゲームの全盛期で、「鉄拳」や「ソウルキャリバー」といったタイトルが人気だった。ほかにも「UFOキャッチャー」や「プリクラ」などが流行り始めたころだった。鈴木は栃木や、新潟、埼玉など各地を数年毎にまわり、施設の運営を担当した。
2005年の経営統合、
バンダイへの転籍
そして2005年にバンダイとナムコが経営統合し、鈴木はバンダイに転籍した。配属先の部署は迷わず、プロダクト保証部(現プロダクトマネジメント部)の「お客さま相談センターチーム」を志望した。お客さま相談センターは商品やサービスに対するお客さまからのご意見やお問い合わせが届く部門であり、お客さまとバンダイをつなぐ大事な役割を担う。
志望した理由は明確であった。「バンダイに転籍したからにはきちんと会社のことが知りたい」「会社のことを知るにはバンダイの商品を購入してくださったお客さまからの声に耳を傾けることが一番の早道だ」と鈴木は考えたという。
「何を作るか、何を売るかではなく、お客さまが何を求めていて、どう考えているか、お客さまの意見をキャッチアップし、バンダイの製品やサービスで実現していくことに喜びを感じます。そういう仕事がやっていて楽しいんです」と鈴木は語った。
「たまごっちデパート」での
経験
その4年後には、当時女児向け玩具を扱っていた「ガールズトイ事業部」へ異動した。鈴木がここを希望したのは実店舗を運営している部署だったから。当時は事業部の直営店である「たまごっちデパート」を原宿や名古屋、そして今「仮面ライダーストア東京」がある「東京キャラクターストリート」にも「たまごっちストア東京」を出店していた。
実はこの時鈴木は、バンダイとして未開拓だった東京キャラクターストリートに、「たまごっちストア」を初出店するため尽力したという。この時の経験が「仮面ライダーストア」で活かされることとなる。
「例えば、店舗スペースの使い方やレジの数。約9坪と大きい店舗ではないのでレジは1台でいいかと思いきや、お客さまが多いときにはすぐに溢れてしまう。その反省を活かし、『仮面ライダーストア東京』では2台にしています。ほかにも、BGMを流した際の音の流れなど、天井スピーカーの位置、商品を陳列する棚の照度など、店内環境のあり方について『たまごっちストア東京』での経験を活かして取り組んでいることは多いです」。
鈴木に限らず、ナムコのアミューズメント関連やたまごっちストア東京で仕事をしていた時に出会った社員が、現在バンダイナムコグループ各社に在籍している。グループ会社のBANDAI SPIRITSの「ガンダムカフェ」や、「ガンダムベース」、さらには「魂ネイションズ東京」など接客を担当する部署で、皆さんノウハウを活かしている。バンダイとナムコの人材交流により、より幅広いサービスができるようになっていると鈴木は語った。直営店同士の横の繋がりもでき、「バンダイ直営店のあり方」という方向での経験や技術の蓄積も行なわれているとのことだ。
お客さまの“聞こえない声”に
応える
鈴木は「お客さまへの想い」を軸にしてバンダイの仕事に取り組んでいる。ガールズトイ事業部の次は、当時男児向け玩具を扱っていたボーイズトイ事業部へ異動した。ここではBtoC(東京おもちゃショー、次世代ワールドホビーフェア)など、社内スタッフが演出の企画側にまわるイベントなども担当した。イベントでは商品のデモンストレーションだけでなく、ヒーローショーのような立ち回りや、観客への働きかけもある。鈴木はこういったノウハウをこの部署で学んだという。
「この商品が受け入れられた、こういうアイデアがヒットに繋がった……イベントを通じ、送り手として自分の想いを実現する楽しさってあると思います。しかし私の中ではそれ以上にお客さまの声を実現することに楽しさを感じています。自分が希望したイベントや商品が店頭で展開される。しかも今はSNSを通じてお客さまが喜んでくださっている声がダイレクトにこちら側に伝わる。私たちにもその声が届きます。これはとても楽しいです」と鈴木は語った。
熱心なお客さまはスタッフに直接想いを伝えてくださるが、そうでないお客さまも多い。そういった“聞こえない声”を受け取る場としてもSNSは大きいという。現代はよりお客さまの声に応えられる環境があるのだ。しかし一方で、今回の「仮面ライダーストア」に関しては女性客の多さは鈴木や店舗スタッフの予想を大きく超えていた。まだまだ予想ができないお客さまの反応があり、それを学んでいきたいと思っているという。
目指すのは
「仮面ライダーストア」の
店舗拡大
鈴木は、「仮面ライダーストア」の店舗拡大を夢みている。「仮面ライダーストアに行きたい」と思っても、東京に、そして日本に来られない人々はいる。彼らの想いに応えるためにも、「仮面ライダーストア」をより広く展開したいという想いを鈴木は持っている。
今後店舗が増えるとすればそれだけスタッフも多くなり、鈴木が大事に考えている想いをどう共有するかも課題になってくる。「仮面ライダーストア」は、鈴木の古巣であり、多くのアミューズメント施設を全国で展開しているバンダイナムコアミューズメントへの業務委託で運営している。
バンダイナムコアミューズメントは1つの店舗のノウハウを他の店舗で広げていくという技術を持っている。鈴木は「仮面ライダーストア」の運営体制を徹底し、ノウハウを確立すれば今後、他店舗でもクオリティも、想いも広げていけると思っているとのことだ。
ポリシーは
「お客さまの“遊び”のお手伝い」
最後に鈴木の仕事に対するポリシーについて尋ねると、鈴木は「お客さまが“遊ぶ”ことをお手伝いしたい」と答えた。
「仮面ライダーが好きで『仮面ライダーストア東京』にお越しくださるお客さまに、ストアでしっかりと遊んで欲しい、そう思っているんです。楽しませる、というのではなく、お客さまに楽しんでもらうことが、私が考えるエンターテインメントなんです。そしてその先には必ずお客さまの笑顔があると思っています」。
今回は鈴木の過去、そして仕事に対する想いについて取り上げた。ナムコ時代のアミューズメント施設の運営から始まり、常にお客さまとのかかわりの最先端にいることを希望し続けた鈴木。その情熱が今、「仮面ライダーストア東京」へとつながっているのだ。「すべての人にとって魅力的な店」の実現に今後も期待したい。
©石森プロ・東映
©BANDAI,WiZ
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