2020年1月17日
“食べられるマスコット”「食べマス」にフォーカスする「夢・創造人」。
後編では「食べマス」の企画・開発業務だけでなく、プロジェクトとして全体を統括・遂行しているキャンディ事業部 小曽根千恵の仕事に対する取り組みや想いに迫る。>>前編はこちら
学生時代に得た「気づき」が社会人生活の基盤に
小曽根の根底には、「あらゆる人の考え方を理解できる人間でありたい」という想いがある。
学生時代にダンスを始めた。自身が部を運営する代になったとき、持っているスキルや部活動へのモチベーション、加えてその部員が成長するのに適した練習方法やレッスンへの要望などは、部員ひとりひとりで全く異なるということに改めて気が付いた。そんな部員達全員が、練習を心から楽しみ、かつ成長できる環境をつくりたいという想いが生まれた。レッスンの運営や演目内での部員の配置、自身の練習方法を工夫した結果、多くの部員が自分のレッスンや演目への参加を希望してくれたり、自分自身も演者として選抜メンバーに選ばれるなどの成功体験を積むことができた。
この経験が“仕事への姿勢”の基盤となる。
「ジェネラリスト」を目指して――
営業担当を経て総合プロデュースに挑む
入社後はシャンプーや入浴剤など日用雑貨を取り扱うライフ事業部の営業担当に配属された。3年後、今度は「美少女戦士セーラームーン」や「ベルサイユのばら」といったキャラクターをモチーフにした化粧品ブランド「クレアボーテ」の営業を担当した。モノ作りに携わったのはキャンディ事業部へ異動した後からだという。
異動の希望は「さまざまな立場の考え方を理解するために、経験を増やしたいから」。営業以外の業務も習得し総合的な仕事がしたい、という希望のもと、そのチャンスがある現在のチームへ配属になったのだという。
食品の企画を考える立場になってみて、改めてその難しさを痛感した。
企画を考えてみても、「この仕様だと1日に100個しか作れない」「輸送途中に変形・変質してしまう」「キャラクターの顔が忠実に再現できない」「美味しさが保てない」。
「作れるもの」に加えて、「冷凍・冷蔵しながら運べるもの」、「安全に売れるもの」という条件をクリアするには、数々のハードルがあることを学んだ。
もうひとつ感じたハードルは、社外から見た、バンダイの「玩具メーカー」としてのイメージ。
それは小曽根が化粧品や日用品の営業でも感じてきたものだった。
各業界にはその業界の専業大手が存在し、巨大なマーケットでは、バンダイのシェアは決して高くはない。新商品を営業する際は、大手メーカーの人気商品に対し、バンダイならではの面白さ、新しさを詰め込むとともに、時には大手メーカーをしのぐ勢いのこだわりをアピールしなくてはいけない。ライフ事業部営業時代の経験はキャンディ事業部でも生かされているという。
「食品や日用品のバイヤー様にとって星の数ほどある商品のなかで、キャラクター商品の優先度は高くない場合もあります。ですので、商品を説明するためにはまず、そのキャラクターの魅力からご理解いただかなくてはなりません。
同じように今の仕事でも、和菓子職人さんにキャラクターの外せない特徴を伝える。権利元に食品がゆえのデフォルメなど、仕様の相談をする。プロモーションで『食べマス』の魅力を1からアピールする。相手の立場を考え、興味や共感を得るプレゼン方法は、入社してからの営業経験で学ぶことができました。」
こういった経験を積んだ上で小曽根は「食べマス」専任担当者となった。「食べマス」では、どんなお菓子を作るかの企画提案から商品仕様の決定、それを店舗に置くための営業に加え、生産管理、プロモーションなどさまざまなものを担当・管理する役割をこなしている。
専門に特化する「スペシャリスト」ではなく、全てに携わる「ジェネラリスト」でありたい、それは学生時代に根付いた想いからだ。「品質を確保するために納期を延ばしたい」、「販売効果を最大にするにはこの時期は逃せない」といったように、社内でもさまざまな役割があり、要求がある。小曽根は異なる視点を自ら体験し習得することで、あらゆる立場の視点、考え方が理解できる人でありたいと考えている。
「『食べマス』を担当させて頂いているのはありがたいです。キャンディ事業部でも、これだけ広範囲の業務を担当しているのは私だけかも知れません。」
新しい挑戦「食べマスモッチ」
そんな小曽根が、和菓子職人・和菓子工場と新たに立ち上げたのが「食べマスモッチ」シリーズである。餡やクリームをやわらかい餅で包み、キャラクターを表現した和菓子だ。
これまでの餡子で作られていた“練り切り”の「食べマス」から、食感や味の変化をつけることができた。加えて、キャラクターの豊かな表情を表現することで、店頭でお気に入りの表情を選んだり、いくつもの商品を買う楽しみが増えたのだ。表情には、出現率が1%程の「シークレット」まで用意されている。自分が購入した表情をチェックし、何軒もの店舗を回って“コンプリート”を目指すお客様もいた。
技術の蓄積により細かいキャラクター造形が行なえるようになった「食べマス」と、表情の豊かな「食べマスモッチ」、2種の仕様でキャラクターの表現できる範囲はさらに広がった。現在もさまざまなキャラクターを商品化すべく検討を進めているという。
キャンディ事業部と自身の存在意義
「バンダイの菓子商材というと「食玩(おまけ付き菓子)」のイメージが強いと思いますが、キャンディ事業部は菓子自体のおいしさ、面白さにも本気でこだわっているんですよ」と小曽根は強調する。例えば「ゲゲゲの鬼太郎 人魂グミ」は、グミの中に層を作って中心に食感と味の違うグミを入れ、人魂のような見た目と、プルプルとした食感を楽しめるお菓子になっている。大きなヒット商品となっている「キャラパキ 発掘恐竜」は恐竜の化石の発掘体験を楽しめるお菓子。型抜きの要領で、パフ入りミルクチョコの地層に包まれた化石のホワイトチョコを“発掘”していく。チョコの味にもこだわったこちらも面白さとおいしさを追求した商品だ。
「菓子や食品は玩具よりも取扱いのある店舗数が多く、お客様にバンダイの商品を手に取ってもらえる可能性が広がります。おいしさに加えて、専業メーカーさんの商品とは切り口が異なるバンダイだからこその面白さ、楽しさを付加した高クオリティ・高付加価値の商品を、多くの人の手に届けることが、バンダイが菓子食品の流通でチャレンジをし続ける意義だと思います。」
最後に小曽根に今後の挑戦について聞いてみた。
「『食べマス』を担当して3年になりますが、モノづくり自体や食品業界の知識はまだまだ少ないです。『食べマス』の新しい仕様やキャラクターについて考えるときなどは、いつも周りの方にたくさん助けていただいています。もっと作れるモノ、使える知識を増やして、自分ができる分野を広げていきたいと考えています。
バンダイにはヒット商品を連発する開発マンや、キャラクターの知識なら誰にも負けない人など、本当にすごい人達がたくさんいます。ただ、私自身は自分にできること、わかることの範囲を増やして、メンバー全員の意見を理解した上でまとめ上げ、ひとつの方向に進めていくことができる、誰の味方にでもなれる存在になるのが目標です。」
©sakumaru/LINE
©水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション
食べマスサイト
https://www.bandai.co.jp/candy/tabemas/
BANDAI Candy
https://www.bandai.co.jp/candy/
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