前職はアパレルの商社にて、当時画期的だったキャラクター衣類の企画や生産などを担当していました。丁度、バンダイがティーン向けにタレントIPのアパレル事業を強化するタイミングだったため、自分の経験がそのまま活かせるのではないかと考え、面接に臨みましたが、トントン拍子で話が進んでいった記憶があります。昔からファッションも好きでしたし、アパレル事業にこだわりや面白さも感じていましたので、自分は一生この仕事に携わっていくのだと漠然と考えていました。
転職後は、IPの世界観をファッションに落とし込むことに注力していましたが、「仮面ライダー」の全社連動会議にアパレル事業部担当として出席した際に、強い衝撃を受けました。その会議で、強力なパートナーである東映様と当時のバンダイ担当者の「作品と一緒にモノを作る姿勢」に触れたことで、キャラクターを生み出すところから関われる役割に魅力と可能性を感じました。それからジョブローテーションを希望して4年後、トイ事業部門で念願だった「仮面ライダー」の玩具企画開発を担当することになりました。
番組と連動している変身ベルトは、玩具領域だけでも企画、開発、仕入、プロモーション、営業など様々な担当者との連携が不可欠です。さらには、バンダイの窓口として、番組制作における社内外の交渉や調整も加わってきます。最初はそのスケールに戸惑いましたが、各分野のスペシャリスト達との出会いや、全く違う意見や考え方をベースに1つのものを作り上げていく過程が面白いとも感じました。苦労や不安も多いので、企画段階ではもうこんな思いはしたくないと思う事もありますが(笑)、子どもたちが商品を手にして喜んでいる姿を見ると苦労が吹き飛びます。
発売日の土曜日と番組が放映された日曜日では、子どもたちの顔の表情がはっきり違い、変身ポーズもマネしてくれていたりします。「放送で変身したヒーローの姿を知ると、変身ベルトがより魅力的になる。」ここにキャラクターの力を実感します。
どのような遊びを採り入れたら子どもたちが夢中になってくれるのか、初めてメイン担当として試行錯誤した「ビルドドライバー」や、新しい年号を背負う令和最初の変身ベルトとなった「飛電ゼロワンドライバー」は番組制作にも深く携わらせていただいたので特に思い入れが強いです。変身ベルトなど新商品を発売すると、子どもたちに会いに定期的におもちゃ売場に足を運び、反響や彼らの遊び方を確認するようにしています。
現在はデピュティゼネラルマネージャー(DGM/次長職)として、玩具企画チームを統括しています。自分がプレイヤーだった頃、好きにやらせてもらっていた感覚があるので、次の世代を担う企画担当者たちが自由な発想で企画やモノづくりができるような環境を整えることに力を入れています。
役割は変われど、おもちゃ売場やイベントで、自らが手掛けた商品やキャラクターに夢中になってくれたあの子たちの笑顔が今でも忘れられないので、この先もずっと「子どもたちの夢中」と向き合い、仮面ライダーのように玩具文化を形成する新たなキャラクターを1から作り出していきたいです。