2021年3月5日
前編では、「光るパジャマ」シリーズの担当であるアパレル事業部の福井菜摘に、商品への想いを聞いた。後編となる今回は、福井自身とアパレル事業部そのものにフォーカスしていこう。彼女がバンダイを目指すきっかけや、彼女の夢。そしてアパレル事業部が“光るパジャマ”を起点にどんな広がりを模索しているのか、話を聞いた。 >>前編はこちら
目次
「修学旅行のしおり」を楽しい読み物に!
人を楽しませる福井の原点
福井がバンダイを目指したのは「ものづくりで人を喜ばせたい」という想いから。その想いを抱いたきっかけは学生時代に作った「修学旅行のしおり」だという。これまでの修学旅行のしおりは「先生からの注意事項」が活字で書いてあるばかりで、ちっとも面白くなかった。結果誰も読まず、ルールが周知されないという悪循環だった。修学旅行の実行委員を任された福井はこれを何とか面白くできないか頭を絞った。
ミニスカート禁止を説明するために、あえて先生にギャグのような丈が短すぎるミニスカートをはいてもらい「これはダメ!」と示したり、早く就寝してもらうために「たくさん寝るとこんないいことがある!」という企画記事を掲載したりと、同じ実行委員の友人とアイデアを出し合いながら、全てのページにクスっと笑える“ネタ”を仕込んだ。福井たちが手がけたしおりは先生や同級生にとても好評だったという。ルールブック的な位置づけだったつまらないものを面白いものに変えることができたことに、福井は喜びを感じた。この経験が原点となり、皆でアイデアを出し合いながら面白いものが作ることができそうなバンダイを志望したという。
この経験はパジャマの企画を手掛けている今でも生きている。「パジャマに着替える」という行為は子どもにとって特に楽しいことではなく、嫌がる子どもは多い。その日常をいかに楽しくできるか、そういう発想は、修学旅行のしおりを面白いものに変えたという経験に通ずるものがあると福井は語った。
「光るパジャマ」企画担当としてのやりがい
福井は入社4年目、アパレル事業部が最初の配属先だ。1年目はお子さま向けの外着カテゴリーの中でTシャツなどの企画を担当し、2年目から現在に至るまでパジャマの企画を担当している。
現在の仕事でのやりがいを尋ねると、福井はこう答えた。
「購入者アンケートで親御さんから、お子さまが『いつもはお風呂をいやがったのにパジャマに着替えるために自分から入るようになった』、『光るところが見たくてお布団に早く入るようになった』といった声が数多く寄せられます。私の仕事が全国のお父さん、お母さんの役に立っているのかと思うと、とてもやりがいを感じると同時に、もっと役に立ちたい、お子さまたちの生活を応援したいという気持ちが強くなりました。ほかにもSNS等でお子さまが実際に『光るパジャマ』を身に付けて喜んでくださっている姿を見てモチベーションにしています。」
アパレル事業部では、多くの専門的な学びもあるという。例えば子どもが着る衣服に紐や紐状の飾りをつける場合、何かにひっかけてしまって首が締まるなどの危険がないよう、長さの規定があるなど「子ども用の衣料の安全性」に関するJIS基準がある。当然この基準に基づいた商品を企画しなければならない。ただデザインにこだわるだけではなく、衣服そのものに関しても日々勉強し、子どもたちが笑顔で安全に過ごせる衣服を届けるために一人一人が努力しているという。
「光たもれ~」で話題のパジャ麻呂/
大好評『キャラねる袋』とは
日曜日の朝、テレビでよく目にする「光るパジャマ」のCMは読者の皆さんも印象に残っているのではないだろうか。「光たもれ~」が決め台詞の“パジャ麻呂”が活躍するあのCMだ。このCMも福井を含むプロモーション担当が制作している。
アパレル事業部では各チーム内で企画・開発・生産・プロモーション・営業を一貫して行っているところがほとんどで、CMなどのプロモーションも商品の企画担当者が兼任しているケースが多い。
光るパジャマのCMでは、パジャ麻呂の起用で面白くて突飛な印象を与えられるよう、お子さまたちに興味を持ってもらうために演出にはこだわったという。「光たもれ~」と言うときの手首の回し方も細かく修正し何度も撮った中から採用されたワンシーンとのこと。こだわった甲斐もあり、初回の放送時には「パジャ麻呂」がTwitterのトレンドにもランクインした。もともとは光源氏から着想を得たキャラクターであったが、よりお子様たちに認知してもらいやすいよう、キャラクター設定や決め台詞などを調整していった結果だという。
一方で2019年のCMキャラクター「パジャマジシャン」を懐かしむ声も多いという。CMを印象づけるためのキャラクターだったが、「ここまで反響があるのか」と地上波のCM効果を実感させられたとのこと。
福井に印象に残っているプロモーションについて尋ねると、対象商品を数多く用意し、1月まで約半年間実施していた『変わ~る光~る!キャラねる袋キャンペーン』と答えた。
『キャラねる袋』はたて約150cm、よこ約90cmの大ボリュームの子ども用寝袋で、対象商品である、角度によって柄が変わって見える「変わ~るチェンジングパジャマ」と、暗いところで光る、「光るパジャマ」の2つの要素をあわせもったキャンペーン景品である。対象のパジャマを購入し、アンケートに答えた人の中から抽選で総計1,000名にこの『キャラねる袋』がプレゼントされるという大型キャンペーンだ。
前述の通り、チームは企画開発・生産・プロモ・営業担当などパジャマに関わる全員で成り立っている。
「お子さまの使用シーンを第一に考える企画、モノづくりの観点で実現可否を検討する生産、お子さま向けのアイテムでありながら実際に購入していただく親御さんにどのように伝えるかを考え抜くプロモーション。商品を取り扱っていただく販売店様と向き合う営業。
立場の違うそれぞれの担当から景品内容や応募方法など皆で意見を出し合い、形になった施策です。キャンペーンはおかげさまでたくさんの応募をいただきましたし、今後の商品・プロモーション展開における新たな可能性を気づかせてくれたアイテムにもなりました。」
夢は「バンダイオールスタープロジェクト」
福井のチームは光るパジャマ以外にも「お客さまに喜んでいただける商品の枠をさらに広げたい」と強く想っている。『変わ~るチェンジングパジャマ』は、「レンチキュラー」の技術を用いて、見る角度で柄が変って見える楽しさを盛り込んだパジャマだ。光るパジャマは暗いところでないと効果が見えないので、売り場で光った様子を見せられないという懸念があったが、変わ~るチェンジングパジャマは売り場で柄が変わって見えるところを確認できるため、これまでバンダイのパジャマを手に取ったことが無い方が購入されるきっかけにもなっているという。
新商品開発を模索しながらも、福井は“夢”としてバンダイの完全オリジナルIP(※キャラクターなどの知的財産)を立ち上げ、全事業部門が協力して世界観を創り上げ、商品を展開する「バンダイオールスタープロジェクト」を掲げている。このアイテムはブランドデザイン部、登場人物の服はアパレル事業部、このお菓子はキャンディ事業部……というように、IPの世界観をバンダイの事業部が協力して創り上げるようなプロジェクトだ。
企画から全事業部が介入し、商品ありきで設定も検討していく、バンダイの商品から広がる、バンダイ全社でプロジェクトを拡張していくような、商品開発もできるのではないか。多くの商品カテゴリーを展開しているバンダイでこそ実現できる、と夢を語った。
福井は最後にメッセージとして「光るパジャマのほかにも私達アパレル事業部が展開している“キャラクターアパレル”は全社の中でも特に、キャラクターありきではない商品カテゴリーの中で勝負をしている特殊な事業部です。だからこそ楽しくもあり難しい点もたくさんありますが、その分、ひとつのキャラクターの表現方法を幅広くとらえ、キャラクターのもともとのファンも、そうでない人にも喜んで欲しい、届けたい」という想いを特に強く持っています。
こうした “喜んでもらいたい“の気持ちは他のどの部署でも原点になっていると思います。この気持ちを軸に商品に魂を込めている社員が、バンダイにはたくさんいることを日々肌で感じています。普段バンダイ商品とかかわりのない方にもまず一回先入観を捨てて、商品を見てみていただきたいです。今後もバンダイのものづくりにご期待ください!」と語った。
©ABC-A・東映アニメーション
その他のコラム
-
2021年2月19日Vol.16 「光るパジャマ」シリーズ企画人<前編>
~「光ることに貪欲」、おやすみをエンターテインメントに~ -
2021年1月14日Vol.15 ガシャポン®自販機開発人<前編>
~大切にしたいガシャポンの「風景」と、自販機の進化~ -
2020年12月11日Vol.14 「ころがスイッチ」シリーズ企画開発人<前編>
~「アナログプログラミング」で試行錯誤する楽しみを遊びながら学ぶ~ -
2020年11月2日Vol.13 「キャラパキ」シリーズ企画開発人<前編>
~縁日の「型抜き」×チョコレートの掛け合わせ/「食べる」に「遊び心」を~ -
2020年9月18日Vol.12 ストアプロデューサー<前編>
~「仮面ライダーストア東京」すべての人にとって魅力的な店とは~ -
2020年8月25日Vol.11 バンダイCSRプロデューサー<前編>
~バンダイのプロダクトマネジメント部による「出前授業」とは~