バンダイ深掘コラム「夢・創造人」

2020年8月7日

Vol.10 WEBコンテンツプロデューサー<後編>~「バンダイ公式YouTubeチャンネル」での挑戦~

「ワンダースクール」担当者であるメディア部 メディア戦略チームの戸松淳は、バンダイオリジナルの動画製作も行っている。YouTube動画は従来のテレビ番組製作とは違うノウハウが必要だ。さらに、極めて変化の早い流行を積極的に取り入れなければ展開できない。 メディア戦略チームならではの新しい取り組みに戸松はどんな想いで挑戦をしているのか? >>前編はこちら

メディア部 戸松淳

戸松のこれまでの歩み

まずは戸松のこれまでを聞いていこう。戸松はバンダイに中途入社した。それまでは総合電機メーカーで、営業を担当していた。営業の仕事は好きだったが、戸松は「映画」が好きで、映画のIPやキャラクターなどに携わる仕事をしたい、また営業以外の職種にもチャレンジしてみたいという想いからバンダイに入社したという。

入社後はまず版権元とのライセンス交渉を担当した。戸松は海外市場の担当だったので、「このキャラクターでこのような商品を展開したい」というバンダイの各事業部の思いを受け止めた上で、さまざまなIPの商品の海外展開に関して、ライセンサーとの調整や交渉をしていたという。

バンダイは毎年、部署異動の希望が出せて、希望が通れば新しい仕事にチャレンジできる。戸松が同じメディア部で「ワンダースクール」を運営するメディア戦略チームへの希望を出したのは、バンダイに関連するキャラクターだけではなく、社内外と連動し多様なコンテンツを企画運営していることや、営業以外の職種にチャレンジできることに興味を持ったからから。また、戸松は前職の経験からIT系に強いと言うこともあり、その知識を生かせることも大きかったとのこと。

戸松はこれまで電機メーカーの営業、版権営業と「BtoB(Business to Business)」つまり企業間での仕事がメインで、「BtoC(Business to Consumer)」、"お客様相手"に直接関わる仕事はこのワンダースクールが初挑戦だった。しかも低年齢層の多いユーザーを相手にする。全く違う方法論が必要となるため、面白さを感じると同時に、難しさも感じる場面が多かったと語った。

「Youtubeバンダイ公式チャンネル」の運営

戸松はさらに「YouTubeのバンダイ公式チャンネル」も担当している。YouTube動画を作るという初めての仕事を、かなりのボリュームで任されることとなった。ワンダースクールに留まらず、幅広いユーザー層に向けて、それぞれのコンテンツを作っているとのことだ。

バンダイ発のVtuber「DJマロンとMCズイミー」の動画も手掛ける
バンダイ公式YouTubeチャンネルURL:
https://www.youtube.com/channel/UCtvh0wC06tV2EeRBk1OfUhg

特に今のYouTube向け動画配信は、従来と違う方法論も求められる。戸松は日常的にYouTuberたちの番組も見て参考にしているとのこと。「バンダイの公式チャンネルである以上さまざまなキャラクターも扱う。その中では守らなくてはいけないルールや、キャラクター性、世界観なども大事にしていかなくてはいけない。また版権元様など関係者との関わりも多い。そういった関係性や扱うコンテンツを大事にしながら、どういった所で面白くしていくか、自分たちが面白いと考えるものを実現していくか。子どもが飽きない動画作りをしていきたいという思いはずっと持ち続けています」。

YouTube向け動画は非常にシビアな世界だ。ほんの数秒で面白い/つまらないを判断されかねない。戸松の中でもまだまだ正解はわからず試行錯誤の毎日だという。MCを立てた動画企画、バーチャルYouTuberのコンテンツなど戸松は多くの動画を手がけている。

動画製作で意識している1つのポイントは、いかに視聴者を惹きつけるか。動画途中の映像をいきなり冒頭で切り出すことで、視聴者に端的に動画のテーマを提示するなど、興味を惹かせる工夫を盛り込んでいるとのこと。アニメ演出でストーリー性を持たせたオープニングなど、YouTube用映像における冒頭の重要性を戸松は語った。

動画の進行もさまざまな方法を考え、カッチリ決まった台本を作ることもあれば、かなりフリーな動画製作を行なうこともあるとのこと。その上で戸松は感慨深げに「答えは、まだわからないですね」とつぶやいた。何が正解かはまだわからないが、とにかく視聴者の興味を惹くため、動画を気に入ってもらうために幅広い手法を用いた挑戦をしているという。

YouTubeチャンネルの運営で手に入れた、新しい知識の活用

YouTubeバンダイ公式チャンネルでは人気のキャラクターが数多く登場し、ユーザーの人気は高い。非常に高いポテンシャルを持っているだけに、プレッシャーもあるが、バンダイだからこそできる強みがある。その1つは「発売前の商品を使った動画作りができる」ということだ。

商品の「初出し」などを行い、ユーザーの興味を発売前にしっかり盛り上げることができる。これは利点であると同時に、メーカー公式としての"義務"でもある。いかにユーザーの興味をかき立てるか、プロモーションに繋げていくか、これは社内から求められる部分だ。

「地上波などに加え、オンラインメディアもいかに盛り上げていくか」、このテーマはバンダイ全体が取り組んでいるテーマではある。常に新しい展開を心がけ、キャラクター/商品を盛り上げていく。

一方でキャラクター、商品にはそれぞれ大切なイメージがある。キャラクターや商品を深く理解しておかないと、イメージから逸脱し、ファンからの信用を失いかねない。このためキャラクター/商品を扱えるのは大きな強みである一方で、守らなくてはいけない決まりも多い。そのなかでいかに盛り上げる動画作りをしていくかは、難しいところだ。

「私たちは、版権元様からキャラクターをお借りしています。だからこそ世界観を崩してしまうようなキャラクターの使い方、またメーカーとして本来と違う商品の使い方を提示してはいけない。いかに商品やキャラクターの魅力を伝えるか、ユーザーに商品の魅力や驚きを与えるためにもCMなど既存のメディアと共存しながら、どう差別化していくかも求められます」。

「オンラインメディアだから伝えられる魅力」、これこそが戸松が取り組んでいるテーマである。TVCMなどは短い時間でシンプルに商品の魅力を伝えるが、YouTube動画は決まった尺はなく、動画によってかなり時間も異なる。気をつけていることの1つが、「CMでは説明しきれない商品の魅力を動画で伝えていくこと」YouTubeバンダイ公式チャンネルとしてきちんと商品の使い方、機能の説明、遊び方、商品の魅力をしっかり伝えていくことも戸松が心がけているポイントとのこと。

爆発的なYouTube向け動画の盛り上がり、大きく変わっていく動画製作の形……最先端に立ちながら、従来のメディアの形とも向き合いつつ、自分達ならではの新しい情報の伝え方を模索している。多くの事業部や、版権元様などさまざまな担当者と話し合いながら、新しいコンテンツを生み出していく。決まった正解はないだけに、アイデアを盛り込み、アプローチしていく。

「オンラインの世界やYouTubeの世界の変化はすごく早い。その中で多分正解も1つじゃない。だからこそ色々なことを試していきたい。そう思って動画製作に取り組んでいます。新しい環境で、新しいノウハウを学んでいると実感しています。この知見は社内で共有し、新しい情報の伝え方を考えていきたいと思っています」と戸松は語った。

戸松のミッションとこれから

戸松はバンダイ公式チャンネルで週5本〜7本ほど、自身が担当している動画の投稿をしている。これらを人気のコンテンツにする、というのが課せられたミッションであり、力を入れているものだという。

この動画の中で特に戸松が手応えを感じたのは「ウルトラマンZ」の商品紹介に関する動画。変身アイテム「ウルトラマンZ DXウルトラゼットライザー」を発売直前のタイミングで、効果的にアナウンスできたことは反響も大きく、メーカー公式ならではのイニシアチブが活かせたとのこと。今後も手応えのあるやり方を積み重ねてチャレンジしていきたいという。

「ウルトラマンZ DX ゼットライザー」の紹介動画
https://www.youtube.com/watch?v=bKTS8R5B-Tk&list=PLWicKRwpgDWpi5i-OT7vQLuSt4IzJSykV&index=36&t=0s

「正直、バンダイでYouTube動画を作ってる、という今の仕事は、入社前には想像もつかなかったです。予想もつかなかった環境で色々新しい学びがありますが、これはほかの業務では得られない知識だと思います。今後この知識をいかに社内に還元できるか、取り組んでいきたいですね」と戸松は語った。

読者に対して戸松は「お子さまに対して魅力的な新商品を発信し、親御さまに対してはバンダイの公式ページとして安全・安心な配信を心がけていきます。親子で、時にはお子さまだけでも、安心してご覧いただければと思います。」と読者に語りかけた。

©円谷プロ
©ウルトラマンZ製作委員会・テレビ東京

バンダイ公式YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCtvh0wC06tV2EeRBk1OfUhg

ワンダースクール公式サイト
https://thewonder.it/

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