2019年9月13日
9月1日から放映された「仮面ライダーゼロワン」。
“令和最初の仮面ライダー”として注目を集める本作は、さまざまな想いを抱いてのスタートとなった。
メイン商品であるなりきり玩具「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」も発売して間もないが、有難いことにご好評をいただいている。
仮面ライダーにとって“変身ベルト”は欠かせないアイテムであり、バンダイの人気商品のひとつである。
それだけにそのベルトを“どう生みだしているか?”は気になる方も多数おられるかと思う。
そこで今回は仮面ライダー玩具シリーズの企画を手がけるブランドデザイン部の井上光隆にインタビューを実施。
インタビューは2部構成で、今回は新製品である「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」にフォーカスする。
次回第2部では、仮面ライダーの玩具企画者としての井上の仕事への想いを取り上げていくので、こちらも注目していただけたらと思う。>>後編はこちら
新しい時代を切り開く令和ライダー登場!
「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」は、前作の「ジクウドライバー」や、「ビルドドライバー」と比べると原点回帰の仮面ライダーの変身ベルトに見える。
中央に丸い窓があり、そこに輝くのはバッタのシルエット。バッタは「仮面ライダー1号」のモチーフと同じであり、中央に大きな円があるのは1号、2号ライダーのベルト、そして仮面ライダークウガの「アークル」とも共通するデザインだ。
ベルトやヒーローデザインも含め、「仮面ライダーゼロワン」は、令和最初の仮面ライダーということを意識して制作されているライダーだと井上は語る。
番組を制作する東映や、石森プロ、ADKエモーションズと玩具を展開するバンダイ、PLEXがアイディアを出し合い、新しい仮面ライダー像を模索した。
仮面ライダーは「昭和ライダー」、「平成ライダー」と呼ばれる。他の作品にはあまりない、明確に年号でくくられるヒーローである。今回は企画段階で年号改定が決まっていた為、制作陣も強く意識して新しい節目の仮面ライダー像を考えていった。
なぜ「昭和ライダー」「平成ライダー」とくくられるのか?制作陣がたどり着いたのが、マスクとボディのシルエットの違いだった。「昭和ライダーは全体的に頭の造形が大きくスーツもゆったりとしています。
平成ライダーはアンダースーツに甲冑を着けたシルエットで明確にスリム化されました。ゼロワンはこのシルエットを更にスリムにする事を意識しました。アンダースーツの上に甲冑を着るのではなく、直接アーマーをまとったり、マスクもヘルメット型ではなく、覆面にマスクを付ける構造でこれまでよりも、よりスリムなデザインになりました。
一方で、「仮面ライダーゼロワン」に登場する仮面ライダーバルカンや仮面ライダーバルキリーは、従来の平成ライダー的(アンダースーツの上に甲冑を着る)構造で作られています。
これにより作品内で並び立つとゼロワンの新しいシルエットがより際立ちます。
変身ベルトも新時代に向けた技術の集大成に
そして変身ベルトである。「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」では、「プログライズキー」というガジェットがギミックの鍵となる。
商品もまた技術の集大成だ。劇中では、まずゼロワンドライバーにプログライズキーをスキャンして、“認証”させることでキーモードに開く事が出来る設定。そしてこれをセットすることでベルトのパーツがスライドし、中央に丸い窓が現れ、そこからプログライズキーが秘めている力“バッタ”のシルエットが輝く。
プログライズキーはベルトにスキャンさせる非接触のギミックがある。これは「デンオウベルト」や「オーズドライバー」などの“非接触遊び。プログライズキーを差し込みガチャリとギミックが大きく動くのは「ジクウドライバー」の回転ギミックや「ゲーマドライバー」のガシャットをセットする際の物理的な心地よいガチャガチャ感のギミックを手で動かす楽しさである。
これまでのベルトの面白さや技術が結集させた、「令和の新しいベルト」になっていると井上は語った。
井上が特に気に入っているのはキーを抜く際のギミック。
プログライズキーはベルトのカバーを動かして閉じることで、キーを引き抜くことができる。キーを抜いてから、中央の窓を閉じるとなると二度手間になってしまい、遊びにストレスが出てしまう。
「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」ではこういった遊び心地を追求し、ワンアクションでカバーを閉じてキーが抜ける。逆にキーだけを抜こうとするとロックがかかる。
こういった仕掛けもこれまでのノウハウや技術が活かされているところだ。
仮面ライダーゼロワン変身講座
https://www.youtube.com/watch?v=AzppeiwVwCI
ゼロワンドライバーは“音声”もこだわりポイント。
MONKEY MAJIKのメイナード・プラント氏と、ブレイズ・プラント氏を起用したネイティブ英語の音声となっている。
「ゲーマドライバー」の影山ヒロノブ氏、「ビルドドライバー」の小林克也氏といった「誰もが/どこかで耳にしたことのある声」ではなくしたのも「新しい感覚の変身ベルト」を意識してのものだという。
平成ライダーは“時計”、“フルーツ”、“トランプ”などモチーフからヒーローデザインやベルトモチーフがデザインされることが多かった。だが、令和の新たなスタートとなる「仮面ライダーゼロワン」は、既存の進め方ではない新たなライダー像の提示に挑戦している。
パッと見ではバッタに見えないヒーローデザインや、バッタなのに蛍光イエローというゼロワンのカラーもそういった考え方から来ている。
これまでの仮面ライダーでやってこなかった事という気合いが随所に込められているのだ。
ちなみに変身講座の動画などでも強調しているベルトの音声が流暢な英語で、日本人には何と言っているか聞き取りにくいというのも変身音のポイントだ。
今まで劇中で流れていた変身音は「子供にもしっかり聞き取りやすく」だったが、今回は「よくわからないけどカッコいい」という感覚にチャレンジしている。子供達がこのよくわからない英語をどう真似するかも楽しみだという。
ベルトのギミックには「仮面ライダーゼロワン」の今後の展開が隠されている。
キーワードは“複数のベルト”と“プログライズキー”の相互関係だという。「仮面ライダーゼロワン」ではすでに2本目の変身ベルト「エイムズショットライザー」で、仮面ライダーバルカン、仮面ライダーバルキリーという2人のライダーに変身できることを発表している。
こちらはプログライズキーを挿入してベルトを作動させるというアクションで、非接触型の遊びは盛り込まれていない。
ベルトそのものが銃の形で、ベルトから取り外して銃として使える事でゼロワンドライバーとの遊びを明確に差別化している点がポイントだ。使用しているプログライズキーはゼロワンドライバーでも使えて、その際プログライズキーから鳴る変身音が変わる点も遊びの幅を広げる。
作品づくりとモノづくりの関係
「仮面ライダー」に限らず、玩具メーカーがどのように番組に登場するアイテムを、商品として開発しているのか。みなさんも疑問に思ったことはないだろうか。
井上の感覚では、「もちろん求められるものもあるが、アイディアやモノ作りの上では、番組と玩具が相乗効果で面白くなっていく」のが理想だという。
番組のお話と玩具として出来ることを日々出し合い、新たなヒーロー像を模索していく。こういうギミックを使いたい、こういうヒーローにしたい、それならばこういうアクションはどうだろう? 色々な意見を出し、それらのアイディアはさらに厚くなり、コンセプトが補強されていく。ベルトがヒーローへ影響し、ヒーローがベルトのコンセプトを固めていく。それぞれの相乗効果でより面白く、カッコイイものへとなっていく。
多くの新しい制作スタッフ。新しいスタート。新しいライダー。
「仮面ライダーゼロワン」はさまざまな意味の “新しさ”を追求している。新しさへの挑戦は、常に不安や反対もつきまとう。
それでも自分達が信じる「面白さ」を突き詰めていきたいという。
【仮面ライダーゼロワン】第1話 全編無料配信
https://www.youtube.com/watch?v=rWZ2zZ3Iujc
「仮面ライダーゼロワン」の第1話は10月31日まで無料で公開されている。
通常1話では、ベルトの使い方や戦い方など、視聴者へのチュートリアルがメインとなることが多いが、「仮面ライダーゼロワン」では、人気芸人をコミカルな悪役として登場させて子どもの目を引きつけたり、著名な俳優がゲストキャラとして出演したりなど、視聴者の意識をテレビに向かわせるための、たくさんのアイディアと工夫を凝らされている。
最後に井上はユーザーへのメッセージとして「たくさんのアイディアと、これまでの技術や経験、色々な工夫を凝らして、社内外含め、多くの人の想いと力が詰まった変身ベルトです。『変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー』をお願いします」こう語りかけた。
「仮面ライダー」シリーズがいかに多くの人の想いで作られているか、新しい仮面ライダーである「仮面ライダーゼロワン」がこれまでにない強い気合いでもって作られているか。
そして「変身ベルト DX飛電ゼロワンドライバー」は、携わる人びとの想いはもちろん、“新しさ”への挑戦が詰まった商品だということをおわかりいただけたら嬉しい。
©2019 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
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