開発者の想いとともに、バンダイが手掛ける商品やサービス、IPの魅力をお届けする「夢・創造人だより」。今回は、バンダイと吉本興業の共同製作によるショートCGアニメーション『ヘルピポ!』の仕掛人からのお手紙です。「吉本芸人」をキャラクターにするという新たな発想の裏には、「お笑い」にかける担当者の深いこだわりがありました。
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目指したのは、芸人さんの面白さを最大限まで
引き出せるキャラクター皆さん、こんにちは。
バンダイで新規IP(キャラクターなどの知的財産)の開発をしている茂木(もてき)と申します。
バンダイでは子どもから大人向けまでさまざまな玩具をはじめとした商品を展開していますが、僕たちは既存のIPとはちょっと違った切り口、中でも「お笑い」をテーマにしたIPを作れないかと模索していました。そこで生まれたのが、お笑い芸人さんの良さを活かしながらキャラクターのコントをアニメーション化した『ヘルピポ!』です。本作はCGを使ったショートアニメとしてスタートしましたが、これは「どうやったら、芸人さんの良さを最大限に引き出したキャラクターを作れるか?」にこだわって決めたものです。芸人さんって、おしゃべりも当然面白いですが、「動き」や「間」や「表情」も独特な面白さにつながるポイントですよね。そこで、本物のお笑い芸人さんの動きをモーションキャプチャで取り込んで作ったCGのキャラクターと、その魅力を短時間で伝えられるコントという形式を選んだんです。
メインキャラクターは、地獄で暮らす鬼の高校生 「突髪鬼(トッパツキ)モリスケ」と「雲髪鬼(ウンパツキ)モジャオ」。2人を演じてくださっているのがチョコレートプラネットさんです。たくさんの候補が挙がった人選の中でも、チョコレートプラネットさんは自らいろんなキャラクターになりきったコントやネタが得意で、「なりきる」ことが非常にうまいという実績がある。その上で幅広い層に人気があることからお願いしました。お二人にとっても非常に珍しい経験なのではないかと思いますが、芸人さんがモーションキャプチャでキャラクターになりきってコントをするアニメ自体、ほぼ前例がないことなんですよ。
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世代の垣根を超える「お笑い」の強さ
『ヘルピポ!』は短尺でゆるいアニメなので、ひょっとしたら「簡単に作ってる?」と思われるかもしれません。でも実はモーションキャプチャ装置の準備がとても大変なこともあり、収録は毎回半日以上かけてじっくり行っています。収録では、コントをチョコレートプラネットさんにお任せして、アドリブも歓迎で、お二人のやりたいことをライブ感覚でやっていただいています。それを最終的に映像にするときに……例えば、驚きのあまりキャラクターの口から心臓が飛び出してしまうというシーンなら、「心臓はどういうCGで表現しようか?」といったことは、後から制作チームで話し合って決めています。チョコレートプラネットさんの面白さと、お笑いの幅を狭めない方法を追求した結果、高校生と学校の「あるある」を扱うテーマとともに行き着いたのが現在の『ヘルピポ!』の形なんです。
ちなみに、「怖い印象がある地獄に、楽しそうな鬼たちがいる」という『ヘルピポ!』の設定は、かつて志村けんさんが演じた「バカ殿」というキャラクターが持つギャップの面白さを参考にしています。実は僕がこの企画を立ち上げたきっかけに、子どもの頃によく見ていた志村けんさんのコントの面白さを思い出した、という出来事があったんです。当時のバラエティー番組を久しぶりに観ていたところ、初めて志村けんさんを目にする自分の子どもも一緒に観て、笑っていて。そこで、世代の垣根は関係なく「お笑いってやっぱり強いな」と気づいたのが始まりでした。「お笑い」を活用した今までにないIPとして立ち上げた『ヘルピポ!』にとっても、何より皆さんに観て笑ってもらいたい、というのが一番の原動力になっています。ゆくゆくはバンダイやグループ会社で商品化をして、より多くの方に『ヘルピポ!』を知って欲しいと思っていますが、まずは、つらいニュースも多い大変な時代のなかで、『ヘルピポ!』をご覧になって、こんなキャラクターがいたらいいな、と想像していただいたり、日々の生活の中の1 分だけでもクスッと笑って楽しんでもらえたら嬉しいです。
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